農作業を考えたリノベーションで築100年超の母屋に新しい息吹を
森 優

山根木材リモデルリング株式会社
一級建築士・宅地建物取引士
一級建築施工管理技士

森 優

農作業を考えたリノベーションで
築100年超の母屋に新しい息吹を

広島市安佐南区M様邸

納屋の片づけから始まったリノベ計画

納屋の片づけから始まったリノベ計画

農家の4代目として、広島市郊外で広島菜や枝豆の栽培を手がけるM様夫婦。ご主人が生まれ育った築100年以上の母屋は、庭に面して広縁が設けられた伝統的な日本家屋だ。さらに、敷地内には納屋や増築した家も建つ。終活を見据えて、まずは納屋の片づけから始めよう。そんなご夫婦共通の思いが、リノベーションの出発点になった。
「はじめは納屋を野菜梱包などの作業場にして、私たちの生活拠点だった増築部分は壊す予定でした」とご主人。しかし山根木材から、納屋ではなく増築した家の1階を作業場に変えるプランを提案されたという。「そうすれば、農作業を終えた後、母屋に新設する浴室に直行できるようになりますよ」という説明にも納得。「そこからどんどん改築・改修の範囲が広がって、けっこう大がかりな工事になったんです」。

暮らしの機能を母屋に集約する

暮らしの機能を母屋に集約する

「生活の中心を母屋に変えて、明るく気持ちの良い空間で暮らす。これがM様邸のテーマの一つでした」。そう話すのは設計を担当した森さん。建物の北側に浴室やキッチンなどの水回りをまとめ、窓がなく暗かった和室と廊下の一部を取り込んで、家族が集うリビングダイニングに変更。ご夫婦の寝室は、短い動線で行き来できるようにリビングのすぐ隣にレイアウトした。また、梁や柱はできるだけ活用し、床はそれらとマッチする突板フローリング仕上げに。壁・床には断熱材を、窓にはペアガラスを採用し、古い家の寒さも解消している。
「提案のたびに新たな要望が出てきて、図面は10回描き替えました(笑)。大変でしたが、私の話を受け入れた上でこうしたいと言ってもらえるので、同じ方向を向いて進めたように思います。入り込んだ話もしやすくて楽しかったですよ」と森さんは振り返る。

歴史があるものを生かすというこだわり

歴史があるものを生かすというこだわり

大正時代から受け継いできた母屋に思い入れがあったのは、奥様の方だったと聞く。「私はもともと古いものが好き。だから古民家ならではの梁は出してほしいし、玄関の飾り窓や広縁の吊り灯篭なども残してほしいと伝えました」。これらの要望はそのまま採用され、しかも住まいの快適性や利便性はぐんと高まった。
中でも奥様が気に入っているのが、広々とした対面式のカウンターキッチン。「以前は壁に向かって調理していましたが、これからはキッチンに立つとリビングと和室、その向こうの庭まで見渡せます。この開放感がいいでしょう」と嬉しそうだ。日々の農作業と並行して行ったリノベーションはとても慌ただしかったそうだが、ご夫婦の表情からは「思い切ってやってよかった」という言葉通りの満足感がうかがい知れた。

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リフォームデータ

住所 広島市安佐南区
工事個所 LDK、DK、浴室、トイレ、和室、洋室、2階、玄関 他
築年数 100年以上
工事面積 約62.90坪
工期 約4カ月
家族構成 60代ご夫婦、ご子息

間取り

  •  Before 間取り
  •  After 間取り

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